和歌山県庁の概要

庁舎概要

 和歌山県庁は本館、東別館、北別館、南別館及び第2南別館の5つの庁舎で構成され、本館と同一敷地内に和歌山県警察本部が所在しています。

 本館には知事室、副知事室、総務部他を配置し、東別館には商工観光労働部、農林水産部等が配置され、北別館が議会棟の役割を果たしています。

 一方南別館及び第2南別館は隣接する別敷地に在し、南別館には防災センター、県土整備部、教育委員会が、第2南別館には、県税事務所、海草振興局が配置されています。

本 館  RC造 地上4階建 延床面積 14,099.92平方メートル   

    昭和13年竣工

東別館 RC造 地上5階建 延床面積 4,726.20平方メートル

    昭和39年竣工

北別館 RC造 地上5階建 延床面積 11,810.15平方メートル

    昭和41年竣工

 県警本部庁舎

本 館 RC造 地上5階建 延床面積 3,856.93平方メートル

    昭和43年竣工

指令室 RC造 地上2階建 延床面積  820.44平方メートル

    昭和43年竣工  

南別館 鉄骨造(CFT柱)中間免振 地上10階建   

    延床面積 11,552.51平方メートル

    平成19年竣工

第2南別館 RC造 地上3階建

    延床面積 2,022.72平方メートル

    昭和46年竣工

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県庁配置図 本館(東館から)

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南別館 第2南別館

本館

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本館 登録証

 和歌山市内は戦災で多くの歴史的建造物を失いましたが、県庁本館は外観をはじめ知事室や正庁、議場など竣工当時の姿を色濃く残しており、歴史的価値が高いとされ、平成25年国の登録有形文化財に登録されました。

本館ができたころの和歌山

 昭和初期、和歌山市は「繊維産業の工業都市」と「風光明媚な観光都市」の二つのイメージがありました。

 この工業と観光の振興により、和歌山市は人口50万人の大都市を目指していました。

 県庁本館はそのような時代に建てられました。

 県庁本館は昭和11年6月に実施設計が完成し、同年7月に大手6社により入札され、東京の清水組に決定されました。

 清水組は、築地ホテル(わが国初の本格的洋風ホテル)や第一国立銀行の設計施工等多くの先進的な建築を手掛けていました。

   (現在清水組は清水建設株式会社と改名されています。)

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初代庁舎(明治9年建設)
     和歌山市立博物館蔵

2代目庁舎(明治22年建設)

出典:「第12回京摂区実業大会記    

念写真帳」和歌山県立図書館蔵

県庁舎敷地(和歌山刑務所跡)
    和歌山県立文書館蔵
大阪毎日新聞
 同文書館蔵

 本館の建設

 増田八郎は、昭和8年(1933年)大熊喜邦(当時の大蔵省営繕管財局工務部長)のもと、富山県庁の設計監督にかかわり、昭和10年(1935年)富山県庁が完成すると、和歌山県建築課営繕技師として県庁舎の建設に携わりました。

 和歌山県庁の基本計画は、当時の藤岡長和知事と和歌山県出身の行政建築家・松田茂樹技師が行い、意匠設計は増田八郎によるため、外観は富山県庁によく似ています。

 構造設計は、関東大震災を教訓に耐震性の高い建物を目指し、東京帝国大学教授内田祥三博士が監修、坪井善勝(東京帝国大学)が担当しています。

 当時は世界大恐慌の影響がまだ残っており、苦しい予算の中でのやりくりであったと思われます。

 そのような中でも本館の玄関前には庭園を配し、庭園から正面玄関への車寄せへと回り込んで入館する仕組みで、玄関床は御影石でつくられ正面玄関のひさし回り、窓、出入り口の額縁などにはテラコッタが随所に配されています。

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増田(前列右) 内田(右端) 新庁舎設計図

写真 和歌山県立文書館蔵

本館起工式

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起工式 県庁舎地鎮祭の新聞記事(昭和10年12月15日:大阪朝日新聞)

                                                                                                                                                          写真 和歌山県立文書館蔵

本館地耐力試験

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地耐力試験 載荷試験 載荷試験
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載荷試験 掘削 地耐力試験

写真 和歌山県立文書館蔵

本館杭・基礎工事

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矢板用の鉄筋組 矢板の制作・コンクリート打設 くい打ち
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くい打ち 基礎工事 基礎工事

写真 和歌山県立文書館蔵

本館基礎・鉄骨工事

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基礎工事 鉄骨建方開始 中央鉄骨建方開始
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中央部鉄骨建方 正面玄関基礎捨コンクリート打 右翼部基礎背筋

写真 和歌山県立文書館蔵

本館配筋・型枠工事

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左翼1階北側仮枠建込 配筋組立 型枠建込(正面から)
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中央部2階仮枠建込 右翼3階仮枠建込 仮枠建込(北面から)

写真 和歌山県立文書館蔵

 

本館コンクリート打設から竣工

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コンクリート打設(正面) コンクリート打設(背面) 竣工間近の正面
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竣工間近の背面 定礎銘板 一般観覧

写真 和歌山県立文書館蔵

近代化遺産の代表県庁本館

 関東大震災を教訓に県が目指したのは、壮麗豪華な建物ではなく、シンプルで最新のデザインとし、非常時でも機能できる耐震性の高い建物を造ることでした。

 一方、中央階段踊り場の壁には、和歌山県出身の彫刻家・保田龍門(やすだりゅうもん)作のセメント製レリーフ『丹生都比売命(にゅうつひめのみこと)』『高倉下命(たかくらじのみこと)』が飾られ風格ある雰囲気に仕上がっています。

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高倉下命 丹生都比売命

ファサード

 ファサードとは、建築用語で建物の正面外観、人で云うところの「顔」にあたる部分です。

 当時の公共建築のファサードは、「近代和風様式」「和洋折衷様式」「西洋館様式」「ネオルネッサンス様式※」などが採用されていました。県庁本館には、ネオルネッサンス様式が選ばれました。

 その特徴は、外壁全面を覆う黄褐色のタイルと建物を飾る装飾的なテラコッタのレリーフです。高い耐久性を誇る当時の最新素材のテラコッタで覆われた最新様式の県庁本館は、木材と瓦、左官仕上げといった伝統素材で造り上げられた和歌山城との対比によって新しい時代の象徴としての役割を果たしたことでしょう。

  (本館竣工時は、和歌山城天守のかつての姿を見ることができました。)

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正面玄関 正面玄関上部テラコッタ

 ※ネオルネッサンス様式 

 19世紀前半からヨーロッパで始まり、日本を含む世界へ波及した建築様式です。14~16世紀に起こったルネッサンス建築に基づきながら、各地の新しいスタイルを織りまぜた建築様式で、京都市中京郵便局、東京銀座の服部時計店本社ビルなどがあります。

正庁知事室

 本館が竣工された当時と現在も変わらずに位置する室は、議場、知事室および正庁です。

 正庁は、正面玄関の真上の4階にあり、床一面に深紅のじゅうたんが敷き詰められ、腰壁は羽目板、壁には壁紙が貼られ窓や出入口の額縁および扉は木製で、その仕上げは、いずれも高級感あふれるものとなっています。

 正庁と同じく他の室よりも質の高い仕上げになっているのが知事室です。知事室は風通しの良い3階西側に位置し、腰壁等に使われているチーク材は高級感あふれる趣を醸し出しています。壁付暖炉が据え付けられているのも知事室の特徴の一つです。暖炉はベージュの大理石で構成され、チーク材と大理石の色彩のコントラストが何か違うものがあると一目で感じさせてくれます。

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知事室全景 暖炉
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正庁全景 鳳凰・雲形額縁

参照文献:【和歌山県庁本館 歴史と文化のラビリンス】(社)和歌山県建築士会

和歌山県民の生命、財産を守る防災センター南別館

 南別館は県庁の分庁舎としての機能とともに、災害時における活動の中枢を担う危機管理局を配置、防災センターとしての機能をもち、あらゆる災害から県民の生命・財産を守るため、県の防災を強化することを目的に計画されました。

【南別館の主な防災システム等】

ヘリポート    防災ヘリ、県警ヘリの離着陸のためのヘリポート(21m四方)を屋上に設置しました。
非常用エレベーター  4台のエレベーターのうち1台を非常用とし、屋上に着床、災害時のヘリポートと防災センターとの連絡を円滑にします。
非常用発電設備 災害に強いとされる空冷式ガスタービン発電設備を設置しました。燃料は72時間分を貯蔵、バックアップ機能を果たします。
中間層免震構造 大地震時でも防災センターとしての活動が滞りなく行えるよう免振構造を採用しました。
ピロティ 災害時には緊急活動スペースとして活用します。
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ピロティ 災害対策本部

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